最古の覺書 大東流における根源的な秘資料がどれだけ年代を遡れるのかは難しい問題であるが明治三十年代初頭前後の秘伝書は島津先生のご好意により、数種見聞、分析する機会を得られ、当時の同流の本質は大体窺う事が出来た。 しかし色々調査して行くと実際の伝授巻もしかりであるが、同流には多くの稽古覚書が現存しており、よって当時の伝授技術の大体は窺う事が出来るのである。 実際師範家においてそれぞれかなり膨大なる稽古覚書があり、本当に驚かされる。 これは要するに武田惣角師範が高額の礼金を要求し、講習会的に教傳された為に伝授された技法を後で密かに記録する者が出たのだろう。当時はビデオなどもなかったのだから。因みに植芝翁の言うような技法伝授における法外な礼金と言うような事はなかったかとようであるが、ある程度高額であった事は事実であったようである(※)。 驚異の秘伝書最近管理人の依拠する各流儀においてかなり驚異の秘伝書群を入手し、解析する機会を得た。 無窮玉心流目録を覗き見、自己の探究する無雙直傳和義とは二代目荒井氏が大成した流儀では必ずしもなく、やはり長谷川英信に及ぶ極めて古い古典体系である事が判明した。 つまり300年ではなく、400年近い年月それほどの体系の異同なく古典が伝承していたわけである。 また半分諦めかけていた天然理心流の柔術における秘伝書、絵目録を複数の家から許しを得て探究させは頂き、同流の本質のより深い部分を探査する事ができたのである。 そしてそれに加え、長年望んでいた大東流の稽古覺えの文献の原本に接し、解析する機会まで得たのである……。
※ 高額な礼金と言う謂いも本来難しいテーゼである。 そもそも価格において法外、破格などと言う謂は本来不当である。双方が納得してそれなりの契約があったのだから。 約束事の講習伝授があったのであり、双方の納得がある以上はどんな場合でもそれぞれ適正価格であるとも云える。ただそこには不正申告や不正出自、不正傳系などがなかったかどうかはかなりの問題ではあるのであるのだけれども。
乾坤 それは実際各地の講習会を受けた人脈の中で確かに存在し、ある程度多くのものが残っている。最初に驚かされたのは逗子の故武藤正雄先生宅で見せられた『乾坤』であり(これは惣角傳ではなく、盛平傳であるが)、学んだ内容をそのままの形で詳細に記載している事には随分驚かされた。内容的には古典大東流柔術と言うより合氣柔術の古式技術傳と云えるものであるが、その中でも「合氣」の解説は白眉であり、驚異の武術極意を内蔵する合氣系武術文献である事間違いないだろうかと思う。 新発見、古傳資料『乾坤』や久文献、時宗先生研究ノート、写し文献、惣角傳秘伝書群などの多くの形解説や口傳書、研究書などを見聞、分析する機会を得たが、最近少し独自の大東流柔術における形覺え資料を入手、解析する機会を得て、その内容の深さに驚かされたの である。
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